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『「待つ」ということ』を読む [読書]


「待つ」ということ (角川選書)

「待つ」ということ (角川選書)

  • 作者: 鷲田 清一
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川学芸出版
  • 発売日: 2006/08/31
  • メディア: 単行本



 


鷲田清一氏の本です。新聞の書評にあったのだと思うが初版は2006年だというから新刊ではない。裏表紙には「現代は、待たなくてよい社会、待つことができない社会になった」という。ラインのやり取りの話を聞くと、待つことができない社会でもあり、待たなくてよい社会なのかも知れない。待つことができない社会とは、短時間でシロクロをつけなければ決着することができないという意味なのか。それは社会的な影響になっているのでしょうか。


鷲田氏は次のように述べています。


「すると〈待つ〉というのは、時間を駆ることはしないが、しかしただたんに流れるままにまかせるというのでもないような身がまえだということになる。そう、ひとは向こうからやってくるのを期して〈待つ〉。〈待つ〉ことには、「期待」や「希い」や「祈り」が内包されている。否、いなければならない。〈待つ〉とは、その意味で、抱くことなのだ。


 〈待つ〉ことはしかし、待っても待っても「応え」はなかったという記憶をたえず消去しつづけることでしか維持できない。待ちおおした、待ちつくしたという想いをたえず放棄することなしに〈待つ〉ことはできない」


 


 「応え」がなかったという記憶を消去しなければ待てないのだ。待つという一見消極的な選択肢に見えますが、間違えばひどい場面に変わりうるかもしれません。期待や祈りという願望が強く込められているが、実現しないのかもしれないという不安があります。自己本位的な願望だということか。


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「『老年症候群』の診察室」を読む [読書]

 


 


「老年症候群」の診察室 超高齢社会を生きる (朝日選書)

「老年症候群」の診察室 超高齢社会を生きる (朝日選書)

  • 作者: 大蔵 暢
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2013/08/09
  • メディア: 単行本



 著者は「老年科医」の大蔵暢氏です。お年寄りはいくつかの病院にかかることが多い。それは、内科・胃腸科・整形外科・脳外科・リハビリテーション・精神科など部位ごとに違う病院に行かなくちゃなりません。それを「老年」という括りでひとつにまとめようという意図だと思います。患者さんにはとても助かります。


 そのなかで、新聞の投書などにみられるようになった4月から始まる予定の今でいう「フレイル(虚弱化)健診」について触れられています。2013年初版の本なので先駆的だと思います。


 


「なぜ虚弱化が悪いのかというと、弱々しくなることで新たな病気にかかりやすくなったり、もっと転びやすくなったり、身の回りのことができなくなったり、死亡したりといった健康上の悪いイベントをますます引き起こしやすくなるからです。図に示すように高齢者の虚弱化の しくみは非常に複雑なので、例えば病気の予防や治療などの一つの要因だけに対応しても全体の虚弱化の進行を止めることは難しいのです」



 


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「最後の講義完全版 どうして生命にそんなに価値があるのか」を読む [読書]

 


 


最後の講義 完全版 福岡伸一

最後の講義 完全版 福岡伸一

  • 作者: 福岡 伸一
  • 出版社/メーカー: 主婦の友社
  • 発売日: 2020/02/29
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



私は暖かくなりましたので少し散歩を始めました。ところが散歩している人が少ないですし、すれ違う時の距離に気を使います。公園には子どもたちが自転車で集まっています。たむろしているので密集しているといえばいえるけど・・・。子どもたちも時間を使いかねているようです。いい時間の過ごし方がないのでしようか。小学校のグランドでは野球の練習みたいなことがあっていましたが。


 


読書の案内です。福岡伸一氏の本のタイトルは「どうして生命にそんなに価値があるのか」とあります。「動的平衡」のことが分かりやすく書かれていますが、他者に説明せろと言われても難しいのですが。


 


読みどころはいろいろとありましたが、そのなかのひとつを紹介します。最後のほうに「質疑応答」があります。ゴキブリの話がありました。


「もし、ゴキブリが世界から消えてしまったら、地球は滅亡してしまうでしょう。()


大半のゴキブリは熱帯雨林にいます。アマゾンの森の下草あたりに生息しています。枯れ草や昆虫、動物の死骸を食べ、分解して土に戻しています」


 地球の掃除屋さんとしてのゴキブリがいなくなったら、地球上にゴミがたまってしまって困ったことになるというのです。


 


 それにしてもゴキブリを退治することはやめないと思いました。


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『背高泡立草』を読む [読書]



【第162回 芥川賞受賞作】背高泡立草

【第162回 芥川賞受賞作】背高泡立草

  • 作者: 古川 真人
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2020/01/24
  • メディア: 単行本

 

 朝ドラの主人公の息子が白血病との闘いになっていて、ドナー探しが難航しています。ドナー登録の詳しいことは「骨髄バンク」のホムペ―ジに掲載されています。これを書いている日の報道によれば、池江選手がプールで泳いだという。嬉しいことです

 


古川真人氏の芥川賞受賞作『背高泡立草』を読みました。先祖が暮らした家がある島の草刈りの場面と、そこで暮らした漁師の先祖の話が丹念に描かれています。作者は福岡市生まれ・舞台は九州北部の島。本の帯には「草は刈らねばならない。そこに埋もれているのは、納屋だけではないから」とあります。今を生きている人たちが後を引き継ぐものがいなくても草を刈ったり、農作物を育てるという気概が絶えないことの証明のようです。先祖からの贈り物に感謝しているのかもしれません。


セイタカアワダチソウはアメリカ原産であり生命力が強いものだという印象があります。


あっと言う間に日本各地に広がりました。そこで、日本を支配下に置くアメリカと重ねた詩を読んだ記憶が甦ってきました。


 


方言が沢山出てきます。博多弁や筑後弁でも使うものもあれば、九州北部共通の方言もあるように思います。言葉も含めてていねいな描写に驚きました。


 


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読書量が少なくなった [読書]

 


 


もう3月も終わろうとしています。図書館も3月は休みのようです。移動巡回はやっているようです。ところが移動巡回は月2日の145分です。昨年から図書館も、移動巡回も利用していません。それは自力では行けなくなったからと読む進む量が極端に遅くなって、必要がなくなったからだと思います。遅いながらも読んだことで感じたことを記します。


 


今年読んで良かったのは『残酷な進化論』と『精神科医がみた老いの不安・抑うつと成熟』です。『残酷な進化論』では、人間の都合の悪い進化もあると言うし、今の人間が進化の到達点ではないという。「自然淘汰が働くためには、死ぬ個体が必要だ」という。


『精神科医がみた老いの不安・抑うつと成熟』では、「規則性、連続性から老いを眺めると醜悪にみえるかもしれないが、老いのすべてが醜悪なわけではない」であり「標準化された尺度はない」という。それゆえ研究の対象になりえなかったという。たが、それでは発展がないように思われますが、現実に違いない。


3月には自費出版の本が3冊も届いた。社会との接点が少ない年寄りにはありがたいことです


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『詞華集 郵便ポストのナイチンゲールな夜』を読む [読書]

 


 


「詞華集」とは何か。「美しい詩文を集めた書物。アンソロジー。」とネットの辞書は説明しています。古い『広辞苑第4版』も同じ説明です。の作者は「尚 泰二郎」氏です。


「美しい詩文」の定義が正しいとすれば、次の作品は美しいのだろうか。


 


「老化/爪の先から、何かがとめどなく、剥がれ落ちてゆく。」


 


幼児は何かを獲得していくように見えるが、年寄りは、何かを規則的に剥がしていくのでなく、不規則に剥がしていく。それを美しいと見る人もいるのだろうか。「美しい」という定義から始めなければならないのかもしれません。


精神科医竹中星郎氏は次のように述べています。


「個別性は一面で収斂に、一面で多様化に向かう。規則性、連続性から老いを眺めると醜悪にみえるかもしれないが、老いのすべてが醜悪なわけではない」とし「標準化された尺度はない」と述べています。多くは醜悪なのだろうか。


 


「温暖化/突如として地球が真っ二つに割れる。」


地球が危なければ大国の宇宙軍が他の星に侵略していくのであろうか。


 


この詞華集は「生きるヒント」「不運な日」「愛の賛歌」「糞尿譚」の四つの章で構成されています。


 


「死者


 あなたが生きたのはどんな時代だったのか。


 いくつもの迷路を抜けてあなたに辿り着き、


 世代を超えもういないあなたと繋がりたい。」


 


いくつものことについて問題意識を投げかけています。それを必要とするものが見えてくるようです。


 


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『詞華集 郵便ポストのナイチンゲールな夜』を読む [読書]

 



 



「美しい詩文を集めた書物。アンソロジー。」とネットの辞書は「詞華集」のことを説明しています。古い『広辞苑第4版』も同じ説明です。上記の作者は「尚 泰二郎」氏です。



「美しい詩文」の定義が正しいとすれば、次の作品は美しいのだろうか。



「老化/爪の先から、何かがとめどなく、剥がれ落ちてゆく。」



幼児は何かを獲得していくように見えるが、年寄りは、何かを規則的に剥がしていくのでなく、不規則に剥がしていく。それを美しいと見る人もいるのだろうか。精神科医竹中星郎氏は次のように述べています。



「個別性は一面で収斂に、一面で多様化に向かう。規則性、連続性から老いを眺めると醜悪にみえるかもしれないが、老いのすべてが醜悪なわけではない」とし「標準化された尺度はない」と述べています。



 



「温暖化/突如として地球が真っ二つに割れる。」



地球が危なければ大国の宇宙軍が他の星に侵略していくのであろうか。



 



詞華集は「生きるヒント」「不運な日」「愛の賛歌」「糞尿譚」の四つの章で構成されています。



「死者



 あなたが生きたのはどんな時代だったのか。



 いくつもの迷路を抜けてあなたに辿り着き、



 世代を超えもういないあなたと繋がりたい。」



 



全体に通じるのはエロティシズムへの憧憬なのでしょうか。


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『消費税が国を滅ぼす』を読む [読書]

 


 


消費税が国を滅ぼす (文春新書)

消費税が国を滅ぼす (文春新書)

  • 作者: 幸雄, 富岡
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2019/09/20
  • メディア: 新書



 消費税が許せないのは貧富の格差に関係なく課税されます。下記の本でも指摘されていますが、法人税は減り続けています。さらに読んで気づいたことですが、消費税は、申告は納税者がしますので、税務当局の手間がかからないものだということです。障害者施設で製造したものでも売り上げが一定額になれば課税されます。


 


「逆進性という本質的な欠陥


 人間は生きるため常にモノやサービスを消費します。消費税は生活必需品を含む幅広い 物品やサービスの取引に対して一律に課税されます。つまり消費税とは、いわば人間の生 存それ自体を課税の対象としており、絶対に逃れることはできません。まさに「悪魔の仕組み」だといえるでしょう。 一方、税を徴収する政府からみれば、消費税は徴説繋務の手間がかからないタックス・マシーン(=自動収税装置)です。税金の徴収は、税務当局ではなく、取引に関わる事業者が担うため、税を徴収する立場からいえば、消費税はまさに「打出の小槌」であり、「金の成る木」なのです」(『消費税が国を滅ぼす』富岡幸雄著)


 


さらに許せないのは、増税前は社会保障にカネが必要だということです。増税が実施された今、またしても、高齢者医療費の値上げなどを全世代型社会保障という名目で負担増を目指しています。年金の世代間格差という名目で世代間の対立にすり替えていることです。年金制度をいじってきたのは誰か。


 


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進化中 [読書]

 


 


私がヒトは進化の終着点であると思い込んだのは脳の大きさが決め手だったのだろうか。『残酷な進化論』(更科功著)によればネアンデルタール人のほうが大きかったのだという。そうした誤解が地球を支配しているという意識を持ったのかもしれない。更科氏は次のように指摘しています。


 


「私たちヒトは進化の頂点でもないし、進化の終着点でもない。私たち進化の途中にいるだけで、その意味では他のすべての生物と変わらない。


 それに、いくら進化したって、環境にぴったりと適応する境地には辿り着けない。そのことは、ある場所に昔から住んでいて適応している種を、しばしば外来種が簡単に駆逐してしまうことからも明らかだ。環境に「完全」に適応した生物というのは、理想というか 空想の産物であって、そんな生物はいない。あくまでも生物は(もちろん私たちヒトも)、「不完全」な存在なのだ。 私たちはヒトという種を特別視する傾向があるけれど、それはおそらく脳が大きいからだろう。」


 


報道によれば地球滅亡まで残り「100秒」だという。終末時計として発表されているもので、過去最短だという。それだけ核戦争の危機がさし迫っているということのようです。地球滅亡して何もなくなってしまうのだろうか。危機は核競争だけではない。地球温暖化です。


実感としてはこちらのリスクが大きいのかもしれません。グレタさんが大人に問いかける言葉の重みは次世代の生きる権利に関わるからではないか。また、偉そうになりましたが。


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「生物を産み出したもの」 [読書]

 


 


残酷な進化論: なぜ私たちは「不完全」なのか (NHK出版新書)

残酷な進化論: なぜ私たちは「不完全」なのか (NHK出版新書)

  • 作者: 更科 功
  • 出版社/メーカー: NHK出版
  • 発売日: 2019/10/10
  • メディア: 単行本



 小学校・中学校・高校と一緒だった友だちから久しぶりに電話がありました。3週間ほど前に電話もらったけど、うたた寝していましたので、家族が起こさなかったのです。21時過ぎでした。寝るのは早いが目覚めるのも早い。朝、4時過ぎから今頃は「大相撲ダイジェスト」をやっています。特別のことなく早寝早起きになりましたが、友達は眠たくならないという。


 さて、本日も読んだ本の紹介です。『残酷な進化論』というものです。なんとなく今の人間が完成形で進化の途中だという意識はありませんでした。素人には刺激的な内容です。


本の最期は次のように締めくくられています。


 


「『死』が生物を生み出した


自然淘汰が働くためには、死ぬ個体が必要だ。自然淘汰には、環境に合った個体を増やす力がある。しかし、なぜそういうことが起きるかというと、環境に合わない個体が死ぬからだ。環境に合うとか合わないとかいうのは、相対的なものである。「より環境に合った個体 が生き残る」ということは、「より環境に合っていない個体が死ぬ」ということなのだ。 だから、自然淘汰が働き続けるためには、生物は死に続けなくてはならない。 ()


 死ななければ、生物は生まれなかったのだ。死ななければ、生物は、40億年間も生き続けることはできなかったのだ。「死」が生物を生み出した以上、生物は「死」と縁を切ることはできないのだろう。そういう意味では、進化とは残酷なものかもしれない」


 


 何か、宗教的な示唆のように聞こえますが、進化論の行くつく先は「死」だという。腰痛・難産なども進化の結果だという。本のサブタイトルには「なぜ私たちは『不完全』なのか」とあります。読み返してみたいと思っています。


 


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