『昭和とわたし』を読んで [読書]
サブタイトルは「澤地久枝のこころの旅」。帯には「本書はわが人生のアンソロジーです。」というように、これまでの著作から選んだ50年の集大成です。最後の章が向田邦子さんとの思い出となっています。
著書の一節からです。
「志村喬夫人の忠告
『男ありて志村喬の世界』を書いていたあるとき、志村喬夫人の政子さんが、「なぎなたでなく、せめてこだちにしなさいね」 と言った。なぎなたは薙刀とわかったが、コダチ?木立ちってなんのことだろう、 なんの木かしらとわたしは思って、曖昧な返事を返した。
しばらくして、また言われた。「澤地さんはやっぱりなぎなたかしら。いいじゃない。ぐにゃぐにゃになっちやったら、あなたじゃなくなるものね」
「この間、こだちって、木の木立ちのことと思っていたけど、違うのね。あ、わかった。小太刀?」 「そうよ。なぎなた振りまわしていると辛いでしょ。もう小太刀にかえたらと思ったの」」
志村喬氏は著名な俳優なのでいくつも見たことがあると思うのですが映画『生きる』のブランコに揺れる市役所職員の姿が眼に残っています。
二・二六事件、太平洋戦争、沖縄密約などの昭和史に関わる女性たちを描いてこられた著者のまさにアンソロジーです。幼少期の満州での生活、「棄民」となった敗戦と引揚げ、苦く切ない青春時代そして物書きになってからというように、時代と共に生きた姿を示しています。志村喬夫人はテーマの大きさを心配されたのでしょうか。
2020-01-17 06:00
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