過去を振り返ると [自分史]
先月、所属する団体の全国大会が福岡でありました。なつかしい顔に会いましたが、顔を記憶していなくて名乗られたりして申し訳ないことが何人かありました。特に30数年ぶりにお会いした人は、団体が難しい課題を抱えていた時期に共に活動しました。相手も顔の記憶がなかったみたいで別の知り合いを連れて来られました。あの頃のことを思い出すと少しつらくなります。
それよりもつらくなるのは高校生のときです。今年クラス会がありその報告がありました。年齢を重ね、鬼籍に入った人も増えています。送られた近況報告を見た人から40年ぶりにメールが入りました。高校時代は学校で発作はなく、てんかだということを知っている人はいなかったと思います。老いて過去のことが思い出されますが、振り返りたくないことも少なくないですね。
葉室麟氏が藤沢周平氏の作品についてふれたものからです。
「藤沢作品の中でも『風の果て』は特に好きだ。どこが好きなのかと言えば、中年にさしかかった男が過去を振り返らざるを得なくなったときの視線に思いがけないほどの温かさがあるからだ。
生きていくことは過酷で、何かを得ていくことは、同時に大切なものを捨てることである。それだけに過去を振り向くのは難しい。自分が見たくないものを見ようとはしない。蹉跌の苦渋やひとを傷つけたかもしれない自らの傲慢さから目をそむけてしまう。しかし、藤沢作品には、たじろがずに過去を振り返るひそやかな強さがある。」『河のほとりで』(葉室麟)
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