老いについて―2 永瀬清子短章集2より [読書]
「流れる髪 永瀬清子短章集2」
「わずかの時間に」の末尾は
「老いた私を、平安について、死について、何も考えないと嗤わないでおくれ。
いま自分になりかけたばかりの私を、
ただ取り入れようと蒔きはじめたばかりの私を。」
この末尾の前には次のように書かれています。
「けれど私は家に着いた時、夕食の仕度にかからなければならない」とあります。女性が結婚して働くことが少なかった時代に生きて、今老いにさしかかり、「せまいせまい私の時間。/いまようやく小指の入る位すきまができた。」という。永瀬氏の生れた年は1906年という20世紀の初め頃です。女性の労働者の働く環境が厳しい時代だったと想像します。「せまいせまい私の時間」が老いて獲得できたとする。働く女性の先達としての苦難と誇りが感じられます。
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