すべてを受け容れて [読書]
茨木のり子氏の没後に刊行された詩集からです。公開されることを願ったことかどうかは分かりませんが、魅力的な言葉に包まれています。
「一人のひと
ひとりの男(ひと)を通して
たくさんの異性に逢いました
男のやさしさも こわさも
弱々しさも 強さも
だめさ加減や ずるさも
育ててくれた厳しい先生も
かわいい幼児も
美しさも
信じられないポカでさえ
見せるともなく全部見せて下さいました
二十五年間
見るともなく全部見てきました
なんて豊かなことだったでしょう
たくさんの男(ひと)を知りながら
ついに一人の異性にさえ逢えない女(ひと)も多いのに」(茨木のり子詩集『歳月』)
ここで気になったのは「弱々しさ」「だめさ加減」「信じられないポカ」という負の側面を含めて、豊かな人生を見せてもらったと言う視点の太さです。男は逞しく、強くないといけないという呪縛にとらわれてます。それを解き放っています。
フリーアナウンサーの小島慶子氏は、夫の退職により、自分が稼いで家族を守らないという立場に立たされます。大黒柱と言う呪縛とその大変さを知ります。世の男どもよその大変さに耐えるだけではなく、もっと主張していいのではという趣旨の発言をしています。(正確には『これからの家族の話をしよう』参照ください)
茨木氏は、男が示すいろんな姿を包み込むのは、男の豊かさを見る力があったのだとも言っているかのようです。
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