世の中を動かしているもの [社会]
本日の新聞に 辺見氏の随筆があった。世の中いろいろとおかしいことが多いと思うけど、なかなか変わりません。年金や中国野菜へのすざましい反応に比べて 介護問題や後期高齢者医療制度への関心は低いです。それは何なのか。森崎和江さんの三池炭鉱と与論島出身者のルポなどを読んでいると 官尊民卑の長い歴史が 文化として根付いているのも大きいかもしれないし、そこにある個の問題もあります。
くぐもる「個」の沈黙 辺見 庸 2008年4月8日西日本新聞
私はといえば、藍色の海は見たことがあるけれど、ミルク・ホワイトの海は想像するしかなかった。ガラスばりのカフェで、再びミルク・ホワイトの海を想った。私たちよく見える者たちの視界にひろがる、乳色の闇を。犬と四人は一列になって静かに店をでていった。犬も四人の男女も、ふりかえるということをしなかった。なにも問題はおきなかった。だれにもことさらの悪意はなかった。カフェにはいわば無言の"諧調"だけがあった。とつおいつ考える。なぜだれも席をゆずりましようといわなかったのだろう。怠慢か。たぶん、それだけではない。その場の諧調をたもつために、みな無意識に自分の「個」を殺したのだ。この国ではいつもそうだ。〈 私たちは相席をして、この人たちの席をつくりましょうと〉立ちあがって大声でいえない、あるいはいわせない、くぐもった空気がつねにある。若者が「空気がよめない人」と揶揄したりもする。すぐれた「個」の表現には、しかし、空気をあえて無視した、しばしの乱調がつきものだ
鴨川
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