野良ビト [貧困]
野良ビトとは、野良猫からきた造語だという。河川敷に暮らすホームレスに対して近所の街角に「野良ビトに缶を与えないでください」という看板を見たという設定なのです。2020年のオリンピックを念頭に置いた格差、貧困、差別の道具として使われるのがテロ対策という名の取り締まり法の「共謀罪」を想起させる仕掛けになっています。次のような会話がされます。
「すでに政府はそういう、怪しいとみなした人間をすぐ拘束できるっていうテロ対策の法 案を、通そうとしてるんです。その法案が通れば、だれがいつ捕まっても、おかしくない状況になりますよ。証拠がなくても逮捕できるんだから」
そんなんおかしいだろ、なんもやってねぇのに、」なんでおれらが捕まんだよ?」
「おれらはもう、人扱いにされてねぇんだな」
徳田さんのつぶやきに、柳さんが渋面を浮かべて応えた。
「国も、やるこた一緒だってことだ。町の人らと」
その言葉に川島さんはうなづき、
「あのマンションができてから、周りの町はあからさまに変わりましたね、あ、そんなこ
としていいんだ、相手が生活に困ってようと、なんだろうと、自分にとって不可解でイヤな ものは、目の前から排除していいんだって思っちゃったわけです。この国全体が恥知らずな不寛容に流れていったのと、連動してますよ」
「ぼくは、そんなこと許しませんよ」
吐きだすように言った木下の声が震えていた。」(『
』木村友祐)
ほんの先の未来を示唆する小説です。明るい社会ではないですが・・・。
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