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経済効率だけでなく [脳梗塞]

 「風景の耐えられない軽さ」という辺見庸氏の随筆を読みました。(「

「脳出血で倒れて入院していたころ、私と一緒につらいリハビリをしていた五十歳台とおぼしい男がある日突然、声を絞りだすようにして独りごちた。怪しい呂律だったが「こうまで苦労して生きていく価値があるのかなあ・・」と聞こえた。言葉が耳朶に残り、いつしか私も同じような独言を呟くようになった。「この世の中に頑張る意味ってあるのかなあ

リハビリのつらさを言いたいのではない。生き続ける労苦が周りの風景とつり合わなくなってきた、何だか甲斐がないな、という気分がため息をつかせるのである。久方ぶりに復帰した社会は、清貧も精励も美徳ではなくなっただけでなく、あざけられかねない。」

 
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同じように脳梗塞になった私は以前に比べるとまず走れなくなりました。元々歩くのは遅いほうでしたが、今では追い越されるのが普通で追いつくことはまれです。ところが久しぶりに追いつく体験をしました。4日のどんたくと作業所の販売を見に行きました福岡市の地下鉄七隈線・別府駅の通路。歩道に出るためのエレベーターに向かう男性がいました。右手を抱えるようにして足を引きずっています。同病者なのでしょう。エレベーターまでは結構な距離があります。発病前なら気にはならなかった距離ですが。エレベーター前で追いつきました。乗り込むのは二人だけです。他の人は階段を利用しています。同年代のように見えます。降りるときに「開」を押して待ちました。彼はありがとうございますと言って降りられました。私には、同病者としてのエールがありますし、彼よりも私が軽いのだという卑しい気持ちもありました。

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発病前迄は気づかなかったのですが、体が不自由な人たちを結構見かけます。地下街で松葉づえ2本で行く人を見ると外出するエネルギーに励まされました。地下鉄につながる私鉄もエレベーターの設置工事が進められていますが、私の自宅最寄り駅にはありません。階段を利用しなくても外には出れるのですが、駅前のバス停があるためか、階段を不自由そうに利用する人が多いようです。私がリハビリに通った病院の方も利用しています。

地下鉄七隈線は当初利用予測を大幅に下回り経営的な問題が指摘されていますが、バリアフリーの交通機関としての名声もあります。着工前に1年間設計協議が続けられた成果が取り入れられています。それで、私も、彼も、外出する可能性が広がっています。その意味を広く知ってもらいたいと願います。私が外出しても経済効率は上がりませんが。

 
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